執筆:井上雅夫/更新:2020年11月4日
配偶者控除の改正
2018年に配偶者控除・配偶者特別控除制度が改正されました。
女性の就労拡大のためとして、特別控除の対象となる妻の年収制限が「103万円超141万円未満」から「103万円超201万円未満」へと拡大されています。
また、最大控除額である38万円控除の対象となる妻の年収も、103万円以下から150万円以下に引き上げられました。
今回は現行の配偶者控除制度のおさらいとともに、もしも配偶者控除が廃止された場合、家計にどんな影響があるのかを検証していきます。また、よくいわれる103万円の壁、130万円の壁などの主婦の収入と税金・社会保険の関係についても考察します。
※このページでは、控除を受ける納税者本人が年収1,120万円以下(合計所得金額900万円以下)の場合について説明します
配偶者控除と配偶者特別控除
まずは配偶者控除について整理しましょう。
夫が世帯主で、妻がパートタイム等で働いている場合、妻の年収が103万円以下のときに配偶者控除が適用され、世帯主の所得税の計算において、所得から38万円が差し引かれます。なお、住民税の配偶者控除は33万円です。
ちなみに、配偶者の年収が103万円を超えても急に控除がなくなるわけではありません。配偶者特別控除という名称ですが、配偶者の年収が150万円までは控除額は最高額の38万円、150万円を超えると徐々に減っていき、201万円以上でゼロになる制度があります。
令和2年分から、配偶者特別控除の制度が下表のように変わります。
配偶者特別控除
配偶者の 合計所得金額 |
配偶者の年収(※1) | 控除額 |
---|---|---|
48万円超~95万円 | 103万円超~150万円 | 38万円 |
95万円超~100万円 | 150万円超~155万円 | 36万円 |
100万円超~105万円 | 155万円超~160万円 | 31万円 |
105万円超~110万円 | 160万円超~167万円 | 26万円 |
110万円超~115万円 | 167万円超~175万円 | 21万円 |
115万円超~120万円 | 175万円超~183万円 | 16万円 |
120万円超~125万円 | 183万円超~190万円 | 11万円 |
125万円超~130万円 | 190万円超~197万円 | 6万円 |
130万円超~133万円 | 197万円超~200万円 | 3万円 |
133万円超 | 201万円〜 | 0円 |
※1)配偶者の所得控除が給与所得控除のみの場合。
配偶者控除がなくなると、世帯主の手取りが7万以上ダウン
それでは、もし配偶者控除がなくなった場合に世帯主の手取りがどれだけ減るのか、簡単に計算してみましょう。所得税と住民税でそれぞれ控除されていた38万円、33万円にかかってくる税金を計算すると、家族構成等でかわってきますがざっと次のようなイメージになります。
配偶者控除廃止の場合の税負担増加額
年収 | 所得税率の目安 | 所得税 増加額 |
住民税 増加額(※2) |
税負担 増加額 |
---|---|---|---|---|
350万円 | 10% | 38,000円 | 33,000円 | 71,000円 |
700万円 | 20% | 76,000円 | 33,000円 | 109,000円 |
1,000万円 | 23% | 87,400円 | 33,000円 | 120,400円 |
※2)住民税の所得割の税率を10%として
上記は、あくまで概算となります。
103万円と130万円の“壁”の誤解と真実
よく、働く女性の間で年収が103万円を超えたり130万円を超えたりすると一気に不利になるので、その範囲で働いた方が有利ということが言われますが、誤解されている方も多いのではないかと思い、簡単に整理しておきます。
壁となる金額が二つある理由は、所得税と健康保険で扶養の基準が異なるからです。所得税の基準は103万円で、健康保険の基準は130万円です。
まず所得税の103万円の根拠は、給与所得控除65万円+基礎控除38万円の合計金額ということです。つまり、年収103万円以下の場合は、給与所得控除と基礎控除だけで所得がゼロになるので所得税がかかりません。逆に年収が103万円を超えると、所得税・住民税がかかり始めます。
この税負担がかかり始めることで、課税開始=損という思いから壁といわれています。
ちなみに年収104万円なら、年収から103万円を差し引いた所得が1万円なので、所得税が1,000円(10%)と住民税が1,000円(所得割10%)+5,000円(均等割)、合計で7000円課税されます。結果として年収が1万円増えたら手取りは3000円増えます。つまり、年収が増えれば手取りも増える仕組みになっています。さらに世帯主には配偶者特別控除があります。そういう意味では103万円は“壁”ではありません。
次に130万円の壁です。
妻の年収が130万円以上になると、夫の健康保険の扶養家族からはずれて健康保険料が自分の給料から引かれます。また同時に厚生年金保険料も引かれるようになります。そのため、年収が130万円を超えてしばらくは手取り額が減ってしまいます。これが“130万円の壁”です。
しかし、この壁もずっと続くわけではありません。
世帯主の年収が600万円のケースで試算すると、手取りが下がるのは年収130万円~142万円くらいの間だけです。ですから、妻の年収がもっと増えて150万円、200万円となると、また手取りも増えていきます。壁となる年収の水準からすると、働く意欲がありフルタイムの正社員で働きたいという女性にとっては、それほどの“壁”とは言えないのではないでしょうか?
周知のように国の財政が厳しいなかで、今後は消費税はじめいろいろな税制が見直される可能性があります。大増税時代突入などといわれ、明るい情報はなかなか見当たりませんが、このようなときにこそ、ご自身のライフプラン全体を見つめて、家計や保険の見直しをすることで少しでも自己防衛の手だてを考えることは意味のあることではないでしょうか?
106万円の壁とは
以下の条件を満たすパート従業員は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が発生します。
- 勤務時間が週20時間以上
- 年収106万円以上(1か月の賃金が8.8万円)
- 雇用期間が1年以上か1年以上見込まれる(※3)
- 従業員数が501名以上の企業(※4)
- 学生は対象外
- ※3)2022年10月以降は雇用期間2か月超見込みに変更
- ※4)2022年10月以降は101人以上、2024年10月以降は51人以上の企業まで拡大
【2020年11月4日 編集部注】
執筆者プロフィール
井上雅夫
住宅メーカーに30年いた経験を生かし、相談者の家計とローン、教育や将来について、分かりやすく親切なアドバイスを心掛ける。グッドヒル・プランニング代表。CFP・ローンアドバイザー・宅建主任。
保険マンモスの提携FPは、税金や各種控除についても長けており、より綿密なライフプランニング、保険設計を実施しています。
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