遺族基礎年金が夫にも!

                 

執筆:井上雅夫/更新:2014年07月30日

奥様に万が一のことがあった場合・・・

2014年4月から、妻が死亡した場合に夫に遺族基礎年金が支給されることになりました。ということは、これまでは夫には遺族基礎年金は支給されていなかったということです。

小さなお子様がいらっしゃるご家庭で、万が一ご主人が急に亡くなられたら大変なことになりますよね。それに備えて毎月高い保険料を支払っている方も多いと思います。

一方、万が一奥様が亡くなった場合も家庭は大変なことになります。たちまちご主人に育児の負担が増えて、今までどおり仕事に専念できなくなります。残業を減らすか、ヘルパーを雇うか、出身地にUターンするか・・・苦しい選択に迫られます。例えばヘルパーを雇えば、かなりの経済的負担になります。

さらに、奥様に収入があった場合、その減少分も考慮しなければなりません。二人の収入で家賃や住宅ローンを払っていたのならば、深刻な問題が出るかもしれません。

それなのに、以前の年金制度では、年金に加入しているご主人が亡くなったときに遺族年金が支給されても、妻が死亡した場合には支給されなかったのです。

これは前々から年金制度の検討課題になっていて、今回やっと夫にも支給する方向に改訂されたわけです。

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年金制度改訂の内容

今回の年金制度改訂は最終的な改訂案にたどりつくまでに、かなりの紆余曲折があって、一度は公表した政令案を撤回するという異例の事態までありました。

それは、サラリーマンの夫の扶養家族となっている妻(3号被保険者)が死亡した場合に遺族基礎年金を支給するかどうかが議論されていたためです。3号被保険者本人は年金保険料を個人負担していないので、3号被保険者が死亡した場合は遺族基礎年金を支給しないという案も出ていたのです。

しかし3号被保険者は必ずしも女性(専業主婦)だけではなく、働いている妻の扶養になっている夫(男性)もいて、これまでは遺族基礎年金をもらえていた妻がもらえなくなるケースがあることから、今回はこの案はなくなりました。

少しややこしい話になりましたが、今回の改訂前後で、遺族基礎年金が出る、出ないがどう変わったかについて以下にまとめます。ただし、スペースの関係で厳密さに欠ける点と、今後見直される可能性がある点をご容赦願います。

前提条件

  • 18歳未満のお子様がいる夫婦
  • 夫、妻ともに年金(厚生年金・国民年金・共済)の被保険者

遺族基礎年金の給付の有無

旧制度
(2014年3月まで)
夫が死亡した場合 支給される
妻が死亡した場合 支給されない
新制度
(2014年4月以降)
夫が死亡した場合 支給される
妻が死亡した場合

※ただし、遺族である配偶者の年収は850万円以下

このように年金制度の改訂により、現在は男女の区別はなく、父子家庭にも遺族基礎年金が支給されるようになりました。

スッキリしたようですが、年金保険料をずっと払ってきた人と払っていない3号被保険者との不公平感や、配偶者の年収850万円という一律の線引きでいいのか、という課題などについて、厚労省は今後も議論し、必要なら法改正を図る考えがあるようです。

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妻を被保険者とする収入保障保険

筆者の知人の奥様で、31歳でお子さん3人を残して亡くなられた方がいます。当時は遺族年金は支給されず、ご主人とお子さんの生活は一変しました。

このようなケースには、次のような保険で備えることで、負担を少しでも軽減することができます。

収入保障保険

被保険者:奥様
保障額:毎月10万円を遺族に支給
保険期間:15年(末子の高校進学までの15年間として)

注)収入保障保険とは、収入の減少や経済的負担を和らげるために、毎月一定額が給料か年金のように支払われる保険です。

この保険料はいくらくらいと思われますか?
奥様の年齢にもよりますが、1ヵ月あたり600~1,000円くらいで入れる商品もあります。保険会社はこんな安い保険はあまり積極的に勧めていないようです。

若いご夫婦から保険のご相談を受けると、必ずこの「お守り」のような保険をご紹介しています。ほとんどの方はこんな保険があることをご存じありません。

順風満帆の人生が一瞬にして暗転することがあります。配偶者の突然の死。このいわば人生最大の悲運に遭遇した場合、精神的には周りの家族・親類・友人・社会の協力がなければなりませんが、せめて経済的な面では「保険」などの備えも必要ではないでしょうか?

執筆者プロフィール

井上雅夫

住宅メーカーに30年いた経験を生かし、相談者の家計とローン、教育や将来について、分かりやすく親切なアドバイスを心掛ける。グッドヒル・プランニング代表。CFP・ローンアドバイザー・宅建主任。

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