世帯主が死亡した場合、一定の条件により残された家族に遺族年金が支給されます。
遺族年金のしくみ
支給される年金は、加入している年金制度によって異なります。
大きく分けると以下のようになります。
会社員・公務員家庭の場合
子供あり | 遺族基礎年金 + 遺族厚生年金 |
---|---|
子供なし | 遺族厚生年金のみ |
※公務員の年金制度は、平成27年10月より厚生年金に一元化されました。
自営業家庭の場合
子供あり | 遺族基礎年金のみ |
---|---|
子供なし | 遺族年金の支給はありません! |
夫死亡時の遺族のリスクは、遺族厚生年金がない分、自営業者家庭の方が大きいことが分かります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金を受給できる遺族
遺族基礎年金は、死亡した人によって生計を維持されていた子または子のある配偶者で、年収が850万円未満の人に支給されます。
ここでいう「子」とは、18歳到達年度の末日までにある子または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子を指します。
遺族基礎年金の受給資格
次の条件に該当する人が死亡したときに、条件に合う遺族(前述「遺族基礎年金を受給できる遺族」参照)がいたときに遺族基礎年金が支給されます。
国民年金の加入者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。(ただし、死亡した者について、保険料納付済期間<保険料免除期間を含む>が加入期間の3分の2以上あること)
ここでいう国民年金は、国民年金だけの第1号被保険者でも厚生年金や共済組合に加入している第2号被保険者でも差し支えありません。
遺族基礎年金の保険料納付要件
遺族基礎年金を受給するためには、被保険者または被保険者であった人が、死亡日の前日において死亡日の月の前々月までに、保険料納付期間(保険料免除期間も含む)が全被保険者期間の3分の2以上あることが必要です。
つまり、保険料滞納期間が全被保険者期間の3分の1以上あると、死亡しても遺族は遺族基礎年金をもらうことができないのです。これを遺族基礎年金の保険料納付要件といいます。
なお、平成38年4月1日以前に死亡した場合の特例として、保険料納付期間(保険料免除期間も含む)が全被保険者期間の3分の2以上なくとも、直近1年間に滞納がなければ保険料納付を満たしたことになります。
遺族基礎年金の額
遺族基礎年金の基本額は、780,100円です。配偶者が受給する場合は子の加算が行われます。子の加算は1人目・2人目は224,500円、3人目以降は74,800円になります。
つまり、子供の数と受給できる年金額をまとめると次のようになります。
配偶者と子1人 | 1,004,600円 |
---|---|
配偶者と子2人 | 1,229,100円 |
配偶者と子3人 | 1,303,900円 |
※2018年3月時点
子供だけで受けるときは、子の加算の2人目は224,500円、3人目以降は74,800円になります。
つまり、子供の数と受給できる年金額をまとめると次のようになります。
子1人 | 780,100円 |
---|---|
子2人 | 1,004,600円 |
子3人 | 1,079,400円 |
※2019年4月時点
死亡一時金
国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間が3年以上ある人が、老齢基礎年金、障害基礎年金を受けずに死亡したとき、生計を同じくしていた一定の遺族は死亡一時金が受給できます。受給できる金額は保険料納付済期間によって異なります。
3年以上15年未満 | 120,000円 |
---|---|
15年以上20年未満 | 145,000円 |
20年以上25年未満 | 170,000円 |
30年以上35年未満 | 270,000円 |
35年以上 | 320,000円 |
※付加保険料を3年以上納めた人は8,500円が加算されます。
寡婦年金
国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間が10年以上※ある人が死亡した場合、残された妻に支給される国民年金独自の給付です。
※平成29年8月1日より前の死亡の場合は25年以上
- 死亡した夫が障害基礎年金や遺族基礎年金を受給せずに死亡した場合
- 死亡した夫との婚姻期間が10年以上ある場合
寡婦年金の額は、死亡した夫が受けとれるはずだった老齢基礎年金の4分の3です(付加年金は含まれません)。
また、期間は妻が65歳になるまでですが、実際に受け取りが始まるのは妻が60歳になったときになりますので、最長5年間ということになります。
なお、寡婦年金と死亡一時金は両方を受給できませんので、どちらか一方を選択することになります。
遺族厚生年金
遺族厚生年金
遺族厚生年金を受給できる遺族は、死亡した加入者によって生計を維持されていた次の間柄の人に支給されます。
- 妻注1
- 18歳未満の子・孫または20歳未満で障害等級1級・2級に該当する子・孫
- 55歳以上の夫・父母・祖父母(ただし、夫注2・父母・祖父母の支給は60歳からになります。)
- 注1)30歳未満の子のない妻は、5年間の有期給付となります。
- 注2)遺族基礎年金を受給している夫は、遺族厚生年金も合わせて受給できます。
遺族厚生年金の受給資格
次のいずれかに該当し、受給対象となる遺族がいる場合に遺族厚生年金が支給されます。
- 厚生年金の加入者が死亡したとき、または加入期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき(ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した者について、保険料納付済期間<保険料免除期間を含む>が国民年金加入期間の3分の2以上あること)
※ただし平成38年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡月の含する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。 - 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
- 1級・2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡したとき
遺族厚生年金の保険料納付要件
遺族厚生金を受給するためには、遺族基礎年金と同様の保険料納付要件を満たさなければなりません。厚生年金の加入中に死亡した場合でも、国民年金の保険料滞納期間が長いと遺族厚生年金がもらえない場合があります。
遺族厚生年金の額
遺族厚生金の額は、1の計算式によって算出した額となります。1の算出額が2の算出額を下回る場合は、2の額が遺族年金額となります。
- ※上記受給資格の1.及び3.に基づく遺族厚生年金では、被保険者期間が、300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
- ※上記受給資格の2.に基づく遺族厚生年金の場合、計算式の1000分の7.125及び1000分の5.481については、死亡した方の生年月日に応じて経過措置があります。
中高齢の寡婦加算
遺族基礎年金は、一般的に子供が18歳になった年度末で支給されなくなります。
また、その年齢に該当する子供がいない場合には最初から遺族基礎年金が支給されません。そのため受給額には大きな差が出ます。
これを埋めるために、次の要件のいずれかに該当した場合、40歳から65歳まで遺族厚生年金に中高齢の寡婦加算が年額584,500円加算されます。
- 遺族基礎年金の加算対象となる子がいない妻で、夫の死亡当時、40歳以上65歳未満であること注3
- 遺族基礎年金の加算対象となる子がある妻で、末子が18歳に達した年度の末日(または1級・2級の障害のある子が20日に達したとき)において、40歳以上65歳未満であること注3
なお、夫の死亡当時18歳到達年度の末日までにある子・20歳未満で、障害等級1級・2級に該当する子のある妻は、その子がその該当年齢でなくなり、遺族基礎年金がもらえなくなった時点からの支給になります。
注3)老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている人が死亡したことによる遺族厚生年金の場合は、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮特例の場合はその期間)以上あることが必要です。
経過的寡婦加算
中高齢の寡婦加算はその妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受け取り始めるとその支給は打ち切られます。ただし、生年月日によって自分の老齢基礎年金が少ない場合があります。
それを埋めるために経過的寡婦加算がされます。ただし、経過的寡婦加算は昭和31年4月2日以降に生まれた人は該当しません。
※2018年3月現在。制度改正により、内容が変更される場合があります。
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