退職金の運用法

                 

執筆:井上雅夫/更新:2013年08月01日

退職金などのまとまった資金の運用方法をお探しの方。老後の余裕資金のために、資産の一部を運用したい方。

できるだけ資産は増やしたいが、安全性も確保したいとお考えなのではないでしょうか?

そのような場合には、株や外貨などの比重は抑えて、より安全な運用手段を含むポートフォリオを組まれることをお勧めいたします。そして、その安全な運用手段のひとつとして、生命保険をご検討されてはいかがでしょうか。

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一時払いの終身保険

その生命保険とは、一時払いの終身保険です。加入する目的は、万一の保障ではなく将来自分が受け取る解約返戻金の増加期待です。

今回は、終身保険の中でも、運用成績により利率が上昇する可能性のある利率変動型終身保険(省略して「利変終身」とも呼びます)を例としてご説明します。

この利率変動型終身保険については、以前のコラムでもご紹介しましたが、金利動向により積立利率が変動し、運用によっては保険金額や解約返戻金の増加が期待できる保険です。積立利率には最低保証があります。(X社の場合25年5月現在で1.6%)

もちろん、死亡または高度障害の時は、基本保険金額は加入時から一生涯を通じて最低保証されています。

60歳男性が、退職金の一部を「利変終身」で運用するケースで考えてみましょう。ここではX社の利率変動型終身保険を例にします。

(ご注意ください)X社の利変終身は一時払いがありません。そこで、ここでは保険料の払込期間を最短の3年として、さらに3年分の保険料を最初に前納する場合で計算しています。

1)保険金額500万円の場合

保険料は424万円です。

そして加入から解約までの期間中の運用実績が最低保証の1.6%、2.0%、3.0%の場合の解約返戻金はつぎのようになります。

解約時期 払込保険料
(万円)
解約返戻金額(万円)
1.6% 2.0% 3.0%
10年後
(70歳)
424 405 423 473
15年後
(75歳)
424 425 456 541
 

2)保険金額1,000万円の場合

保険料は848万円です。

運用実績が最低保証の1.6%、2.0%、3.0%の場合の解約返戻金はつぎのようになります。

解約時期 払込保険料
(万円)
解約返戻金額(万円)
1.6% 2.0% 3.0%
10年後
(70歳)
848 810 847 946
15年後
(75歳)
848 851 912 1,083

※上記1)、2)表の解約返戻金額は、積立利率がずっと例示(1.6%、2.0%、3.0%)のままと仮定した場合の数字です。

1)の場合、仮に運用実績が低い状態が続き、利率が最低保証の1.6%のままの場合でも、15年後に解約すれば424万円の保険料が425万円になって戻ってきます。もし、積立利率が2.0%、3.0%と上がれば、解約返戻金はずっと大きくなります。

また、万一の死亡の際には常に500万円が最低保証されます。さらに死亡時までの運用がよければ保険金額も加算されます。死亡保険としての保障や相続対策も合わせて考えることができ、この点が他の金融商品と比べた場合のメリットといえます。

但し、この話は一時払い(またはそれに近い短期払い)を前提にしています。

同じ保障内容の保険を75歳迄の年払いにすると、上記1)の場合で保険料は339,790円/年、60歳から75歳までの15年間の払込保険料の累計は5,096,850円になります。そして、75歳時点での解約返戻金は425万円。これでは有利とはいえませんね。

もちろん、これは60歳で加入するからであって、30代・40代での加入であれば、ずっと変ってきます。

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退職金の運用はポートフォリオで考える

老後のための大切な資産をどう守り、どう運用するかということは非常に大切なことです。

多額の退職金の運用に際しては、当面の生活に使うための流動性の高い資産、元本が保障される安定資産、多少のリスクを取ってもリターンを目指して運用する資産などに適切に配分して運用することが必要です。

具体的な商品でいえば、現預金、株・投信、生命保険などに分散しておくことはリスク回避の点からも非常に大切で、リスクを抑えながらある程度の期待収益率を見込むことが可能になります。

執筆者プロフィール

井上雅夫

住宅メーカーに30年いた経験を生かし、相談者の家計とローン、教育や将来について、分かりやすく親切なアドバイスを心掛ける。グッドヒル・プランニング代表。CFP・ローンアドバイザー・宅建主任。

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