執筆:井上雅夫/更新:2012年07月02日
待たれる社会保障制度の改革
原発や消費税など、困難な問題の議論が進むなかで、残念なのは社会保障制度の改革が、棚上げされていることではないでしょうか?
最低保障年金の問題や、増加を続ける医療費はじめ社会保障費の抑制などは、もともと増税と一体の大切なテーマでしたから、今後の取り組みに期待したいところです。
それから、社会保障でいえば、女性の働き方が大きく変わってきている中で、現行年金制度のうち、遺族年金制度が抱える男女格差の問題が、大きなテーマのひとつではないかと、私は思います。
育児休暇や時短正社員制度など、子育て支援につながるしくみが多くの会社で導入されている一方で、今回とりあげる遺族年金の問題は遅々として進まず、もしも当事者になれば、非常に深刻な問題となる可能性があります。
今回は、男女で大きく異なる遺族年金の内容と、保険を使った自己防衛手段について、取り上げてみたいと思います。
万一の備え、といえば・・・
「万一の備え」といえば、すぐに生命保険と考えがちですが、その前に誰もが加入しているものがあります。―――それは遺族年金(遺族共済)です。
これは多少の制度の差はあれ、厚生年金でも、国民年金でも、公務員共済でも現存します。
あって欲しくないことですが、一家の大黒柱が亡くなったときに、一体どれくらい遺族年金が出るのか―――?
子ども2人の平均的サラリーマンの妻の場合、月に約13~15万、平均余命まで生きたとすると、基礎年金と合わせて一生で約5~6,000万円です。
お子様がお二人のケースで、奥様が40歳の時にご主人がお亡くなりになった場合の例
奥様に「万一」があった場合
ところが、これもあってはならないことですが、もしご主人ではなく、奥様に万一のことがあった場合には、どうなるでしょう?
実は、かなり状況がかわってきます。
現行制度では、奥様に万一があっても遺族年金は一切支払われません。ゼロです(ご主人が55歳以上であれば違いますが・・・)。
※2014年から、妻が死亡した場合に夫にも遺族基礎年金が支給されることになっています
もしも、子どもの幼少時に奥様に万一のことがあれば、ご主人の仕事に多大な影響が出かねません。
たちまちご主人は、残業を減らすか、ヘルパーを雇うか、出身地にUターンするか、など苦しい選択に迫られます。
ヘルパーを雇えば毎月かなりの経済的負担になります。さらに、奥様に収入があれば、その減少分も考慮しなければなりません。
すぐできる、保険による自己防衛
筆者の知人男性で、31歳で奥様に先立たれた方がいます。6歳、4歳、1歳の子どもを3人お持ちでした。遺されたご家族の生活は一変しました。このようなレアケースに、次の様な保険で備えることが出来れば、負担は少しでも軽減されます。
収入保障保険
奥様死亡時 末子の高校進学まで15年間 毎月7万円を遺族に支給する(収入の減少や、経済的負担を和らげるために、毎月一定額が給料のように支払われる保険です)。
この保険料はいくら位と思われますか?
奥様の年齢にもよりますが、月額でざっと600~800円です。
多くの保険会社にこの商品はありますが、どこもこんな安い保険は、あまり積極的に勧めていないようです。
私は、若いご夫婦から保険のご相談を受けると、必ずこの「お守り保険」をご提案します。ほとんどの方はご存知なく、ほとんどの場合、感謝して頂きます。
順風満帆の人生が一瞬にして暗転することがあります。配偶者の突然の死。
このいわば人生最大の悲運に遭遇した場合、精神的な苦痛には家族・親類・友人・社会が協力してあげねばなりませんが、せめて経済的な面では「保険」などの備えも必要です。
だからこそ、保険を扱う私たちFPは、年金など社会保障に精通し、個々のご家族のご事情を把握した上で、『必要な保障を、必要なだけ、リーズナブル』に設計して差し上げる必要がある、といつも強く感じています。
執筆者プロフィール
井上雅夫
住宅メーカーに30年いた経験を生かし、相談者の家計とローン、教育や将来について、分かりやすく親切なアドバイスを心掛ける。グッドヒル・プランニング代表。CFP・ローンアドバイザー・宅建主任。
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