60歳で定年退職した後、元の会社に再雇用されたり、別の会社に就職して働く方が増えています。
再雇用や再就職をした場合、定年退職前より給与が下がることが多いようです。
この収入減をカバーするために、雇用保険から賃金の15%が支給される「高年齢雇用継続給付金制度」という制度があります。
このページでは、高年齢雇用継続給付金制度の対象や支給額などについて解説します。
対象は定年前から給料が25%以上減った60~64歳の人
冒頭でご説明したように、高年齢雇用継続給付は、定年退職後に再雇用・再就職で給料が減ってしまうことをカバーするための、雇用保険の制度です。
そのため、受給するには前提として以下の条件を満たしている必要があります。(支給限度額、最低限度額については後述)
- 60歳以上65歳未満である
- 現在会社員として雇用保険に加入している
- 雇用保険に加入していた期間が通算5年以上ある
- 現在の賃金が定年退職前の75%未満である
- 支給対象月の全期間で育児休業給付・介護休業給付の対象でない
- 支給対象月の初日から末日まで雇用保険に加入している
- 支給対象月中に支払われた賃金額が支給限度額未満
- 給付金の額が最低限度額を超えている
高年齢雇用継続給付の給付金には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
どちらも給付金の算定方法や申請手続きは同じですが、支給要件や支給期間の規定が異なります。
どちらの対象になるかは、定年退職後の再就職のために失業保険を受け取ったかどうかで決まります。
失業保険を受け取らずに雇用された場合
失業保険を受け取らずに雇用されて働く場合、「高年齢雇用継続基本給付金」の対象になります。
勤務先が定年退職前と同じ会社でも違う会社でも、前述の支給要件を満たしていれば、こちらの対象となります。
支給対象期間
被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月まで
失業保険を受け取ったあとに雇用された場合
定年退職後に失業保険を受け取った後に雇用された場合は、「高年齢再就職給付金」の対象になります。
高年齢再就職給付金の支給要件
- 再就職した日の前日時点で雇用保険支給残日数が100日以上ある
- 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる
- 今回の就職について再就職手当の支給を受けていない
支給対象期間
高年齢再就職給付金の支給対象期間は、失業保険の支給残日数によって以下のように変わります。
- 残日数が200日以上の場合:2年間
- 残日数が100日~199日の場合:1年間
支給額は60歳の賃金の15%まで
高年齢雇用継続給付の金額は、60歳になったときの賃金月額を基準に算定されます。
最大で60歳時点の賃金の15%までが支給されます。
なお、高年齢雇用継続給付は非課税ですので、確定申告をする必要はありません。
支給額の計算方法
おおよその支給金額は、「現在の賃金×支給率」で計算できます。
支給率は賃金の低下率※により変わりますので、下の表でご確認ください。
※賃金の低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷60歳到達時の賃金月額×100
賃金の低下率 | 支給率 |
---|---|
75%以上 | 0.00% |
74.5% | 0.44% |
74.0% | 0.88% |
73.5% | 1.33% |
73.0% | 1.79% |
72.5% | 2.25% |
72.0% | 2.72% |
71.5% | 3.20% |
71.0% | 3.68% |
70.5% | 4.17% |
70.0% | 4.67% |
69.5% | 5.17% |
69.0% | 5.68% |
68.5% | 6.20% |
68.0% | 6.73% |
67.5% | 7.26% |
67.0% | 7.80% |
66.5% | 8.35% |
66.0% | 8.91% |
65.5% | 9.48% |
65.0% | 10.05% |
64.5% | 10.64% |
64.0% | 11.23% |
63.5% | 11.84% |
63.0% | 12.45% |
62.5% | 13.07% |
62.0% | 13.70% |
61.5% | 14.35% |
61%以下 | 15.00% |
例)支給対象月の賃金21万円・60歳到達時の賃金月額30万円の場合:
賃金の低下率=21万円÷30万円=70%
低下率70%の場合の支給率:4.67%
給付金額:21万円×4.67%=9,807円
給付金には上限と下限がある
給付金額には上限があり、賃金と合わせて支給限度額までしか受給できません。
また、給付金が最低限度額以下である場合は、給付金は支給されません。
高年齢雇用継続給付の限度額
- 支給限度額(上限):36万3,359円
- 最低限度額(下限):2,000円
※2020年8月1日時点の金額です
賃金(月額)と給付金の合計が支給限度額を超える場合は、超えた分だけ給付金が減額されます。
なお、支給限度額は毎年8月1日に改訂されます。
高年齢雇用継続給付の申請方法と受け取り方
申請手続きは、原則として勤務先とハローワークの間で行われます。
まずは勤務先の人事・総務担当者に支給を希望することを申し出ましょう。
申請から振り込みまでの流れ
- 受給者が会社に支給の希望を申し出る
- 会社が申請書類を用意する
(受給が記入する項目もあります) - 会社がハローワークに申請書を提出する
- ハローワークで受給資格があるかをチェックする
- ハローワークから会社に受給資格の有無の通知書が送られる
- 給付金が指定した口座に振り込まれる
振り込みまでの期間は、「5」の通知書に記載されている支給決定日から1週間程度です。
リタイア後のライフプランを立てられていますか?
高年齢雇用継続給付は、2025年度以降、段階的に廃止されることが検討されています。
この背景には、「高年齢者雇用安定法」の改正により、定年年齢を65歳に引き上げることや定年制を廃止することなどを企業が義務付けられたことがあります。
自分は何歳になるまで働き、リタイア後のためにいくら残すべきなのか。
病気や介護のリスクへの備えとして、民間の医療保険や介護保険は必要なのか。
将来の生活プランを立てたり、保険の検討をする際は、お金に関する幅広い専門知識を持つ、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。
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執筆者プロフィール
三嶋裕貴
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。出版社に勤務したのち、保険マンモス専属ライターとして入社。
お金の失敗を防ぐための保険選びや見直し方、資産運用などの記事を執筆。
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