執筆:井上雅夫/更新:2020年11月16日
NISAの状況
株式の売却益や配当に対する税率20%を長らく10%に抑えていた軽減税率が切れたことに伴い、新たな個人向けの投資優遇策としてNISA(少額投資非課税制度)が始まったことはご存じのとおりです。
1600兆円を超す家計の金融資産を「貯蓄から投資へ」と方向転換して株式市場に呼び込み、日本経済の成長力を押し上げるための大きな流れの一環といわれています。
NISAには期間内の投資の配当所得や譲渡所得が課税されない特典があり、2020年6月までに約1,445万件のNISA口座(一般NISA・つみたてNISAの合計)が開設されています。
一方、実際に一般NISAで投資運用していく上で、いくつか注意すべきポイントがありますので、そのあたりを整理しておきましょう。
一般NISAの年間非課税投資枠は120万円まで
※本記事の情報は2022年12月現在のものです。
2024年からNISA制度は大幅に変更され、投資可能金額が増額されるほか、非課税保有期間の無期限化、現行の「つみたてNISA」と「一般NISA」の一本化などが予定されています。
制度変更の詳細については、金融庁サイトでご確認ください。
まず、一般NISA口座を開設できるのは、1人1口座(1金融機関)のみで、年間の非課税投資枠は120万円までです。
したがって、複数の証券会社と取引のある人なら、常に有利な情報を得られる会社に分散して投資したいと思うかもしれませんがそれはできません。
さらに、一般NISAは一度120万円分まで購入すると枠は終わりなので、購入した株や投資信託を売却しても他の商品への「乗り換え投資」はできません。
今後見直される可能性はありますが、当面気をつけて選びたいポイントのひとつです。
一般NISAの非課税期間5年間をフルに使おうとするなら、短期売買ではなく中・長期投資に耐えられる商品を選ぶことが大事といえるでしょう。
そうした背景の結果と言えるかもしれませんが、2020年6月末で一般NISA口座は全国で1,200万件開設されましたが、大手証券とメガバンク系証券会社の一人勝ちになっているといわれています。
なお、一般NISAとつみたてNISAを同時に利用することはできません。どちらか一方からもう一方へ変更することは可能です(1年ごと)。
従来の配当金受け取り方法では課税される
株式の配当というと、金融機関から郵送されて来て郵便局で受け取るイメージがありますね。
この制度はこれまで通り継続されますが、郵便局で受け取る配当金はNISAで購入した銘柄であっても今後も20%源泉徴収されます。つまり郵便局で受けとる方式は、非課税ではないのです。
では、せっかくのNISAで非課税の特典を受けるにはどうすればよいでしょうか?
NISA口座で買い付けた上場株式の配当金を非課税とするためには、証券会社で配当金を受けとる「株式数比例配分方式」に、事前に変更しておく必要があります。
NISA口座を作り運用を始める際に、ちゃんと手続きしておかないと、せっかくの配当金に課税されてしまうことになりかねません。
NISAでは損益通算できない
NISAと特定口座との違いについても触れておきましょう。
一言でいうと、特定口座はオフェンス向き、NISAはデイフェンス向きといえます。
特定口座には限度額はなく、損失は他の所得との損益通算や繰越控除が可能ですので、頻繁に売買して銘柄を入れ替えたり、積極的な投資で大きな譲渡損失が出る可能性もある人に向いており、オフェンス(攻撃)型の資金運用といえます。
一方、NISAでは他の所得との損益通算や繰越控除はできません。これは大きなデメリットです。
したがってこのデメリットの影響を受けにくい投資方法が向いており、頻繁に売買せずにコツコツと積み立てていくデイフェンス(守り)型の資金運用といえるでしょう。
NISAについては、非課税枠があることばかりがPRされていますが、このようにいろいろと注意しなければならない点があります。お客様からライフプランのご相談を受けるFPは、多岐にわたる知識と情報の獲得に努めています。
NISAや資産運用についてご興味のある方は保険と合わせて相談してみてはいかがでしょうか?
(参考)日興アセットマネージメント 投資信託のメーカーで学ぶNISA
執筆者プロフィール
井上雅夫
住宅メーカーに30年いた経験を生かし、相談者の家計とローン、教育や将来について、分かりやすく親切なアドバイスを心掛ける。グッドヒル・プランニング代表。CFP・ローンアドバイザー・宅建主任。
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