執筆:井上雅夫/更新:2014年06月11日
がん診断は突然に
昨年、取引先の知人が胃がんの診断を受けました。
最初は胃の調子が悪いということで1週間休むとのことでしたが、再検査、即入院ということになってしまい、周囲は騒然となりました。
実はその3ヵ月前に会社の健康診断を受けていて、そこでは何も異常が無かったそうです。ですから周りの人も「まさか彼が・・・」となかなか信じられず、すぐには受け入れられない様子でした。
最近の健康診断とがん検診
最近は予防医学や検査技術の発達によって、病気の早期発見も可能になってきています。しかし、一口に健康診断といっても検査範囲や検査項目にかなりの違いがあります。
「健康診断さえ受けていれば生活習慣病やがんも発見出来るだろう」というのは、誤解であるといえます。
今回はそのあたりの事情をふまえて、健康診断についてご紹介します。
まず健康診断の種類についてですが、一般的な健康診断とがん検診は、おおまかに次のように分類できます。
- 一般健診
- 付加健診
- がん検診
- 人間ドック
一般健診は、学校や企業などが毎年定期的に実施する健康診断のことで、身長・体重・肥満度チェックにはじまり、尿検査、血液検査、胸部レントゲン検査などの検査を行うのが標準的です。一般健診の目的は、結核などの感染症の有無とちゃんと活動できる健康体かどうかを検査することです。
また付加健診は、一般健診にプラスして肝機能や代謝系の異常や生活習慣病について精査する健診で、発病の可能性を早期に発見して健康維持と治療費の軽減をはかるという目的で行われています。
最近は、一般健診に加えて付加健診を実施する会社が増えてきていますが、まだまだ一般健診だけの会社が大半を占めています。
次にがん検診です。がん検診は特定のがんの有無を発見することを目的にした検診です。
がん検診項目と検診内容
がんの種類 | 検査 |
---|---|
胃がん | 上部消化管X線検査 <上部消化管内視鏡検査等> |
大腸がん | 免疫法便潜血検査2日法 <大腸内視鏡検査、注腸X線検査等> |
肺がん | 胸部X線検査、喀痰細胞診、低線量CT肺がん検診 <胸部CT検査等> |
子宮がん | 子宮頸部の細胞診 <狙い組織診、子宮体部細胞診、子宮内膜組織診、超音波等> |
乳がん | 視触診及び乳房X線検査(マンモグラフィ) <超音波検査、マンモトーム生検等> |
肝臓がん・すい臓がん等 | 腹部超音波検査 <腹部CT検査> |
< >内は主に精密検診項目
専門の検査を受けなければ、身体中に発生する可能性のあるがんの早期発見は難しいということができますね。
ちなみに健診と検診の違いをご説明します。
「健診」とは、健康かどうかを確認し、健康上の問題がなく社会生活が正常に行えるかどうかを判断する検査です。
「検診」とは、特定の病気を発見し、早期に治療を行うことが目的です。
最後に人間ドックです。これは一般健診・付加健診の項目に一部のがん検診等も同時に実施する検査で、日帰りコースから1週間コースまで検査内容もさまざまです。
従来は1週間程度入院して徹底的に検査するコースが主流でしたが、最近は時間的・経済的に縮小した短期ドックが多くなっており、中には付加健診と変わらない内容のものもあります。
ですから人間ドックを受けたから安心、ということも必ずしも言い切れない訳です。
いかがでしょうか?一口に健康診断と言っても、いろいろ違いがあることがお分かり頂けたでしょうか?
その違いによって、最低限の病気のチェックにとどまるか、予防的な体調の変化まで正しくとらえて健康管理や医療費削減に繋げることが出来るかが分かれます。
FPは医療関係者ではありませんが、日頃から保険の仕事にたずさわることで、一般の人より多くの病気やけがに苦しむ人に遭遇します。
その時々に思うことは、健康や病気の予防に対する正しい理解がより多くの人々にもっと浸透してほしいということです。
まずは、ご自分が受けている健康診断の内容をチェックしてみるといいかもしれませんね。毎年の健診で受診している検査の意味がより深く理解出来るかもしれません。
執筆者プロフィール
井上雅夫
住宅メーカーに30年いた経験を生かし、相談者の家計とローン、教育や将来について、分かりやすく親切なアドバイスを心掛ける。グッドヒル・プランニング代表。CFP・ローンアドバイザー・宅建主任。
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