
妊娠中、お腹の中の赤ちゃんの成長に伴い、お母さんの体には疾病等、リスクが出てきます。
具体的には、切迫流産や切迫早産、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、あるいは帝王切開での分娩など、予期せぬトラブルに見舞われる可能性もゼロではありません。
これらのトラブルは、入院や手術が必要となり、医療費の負担だけでなく、仕事への影響(休業)による収入減も懸念されます。
公的な健康保険制度でカバーされる部分も大きいですが、全国平均では妊娠・出産にかかる費用は約50万円とも言われ、その中には自己負担となる費用も含まれます。
このようなリスクが身近に存在すると実感するのは妊娠してからの場合が多く、「妊娠中は保険に入れない」という噂を聞いた方から、保険加入に関するご相談を頂くことがあります。
ここでは、妊娠中は保険に入れないのか、妊娠中でも入れる保険はないのか、妊娠中に発生する体のリスクと治療費の保障について解説します。
妊娠中でも保険に入れる!?

結論から言いますと、妊娠中でも入れる保険が増えてきています。
妊娠中は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病等、さまざまなリスクがあるため、これまで加入を断る場合が多くありましたが、最近は保険商品の種類が増え、「妊娠中でも保険に加入したい」という消費者のニーズに沿えるようになってきました。
しかし、注意点もあります。
妊娠中に加入する保険は保障範囲が制限される
妊娠中でも入れる保険が増えてきてはいますが、保障範囲は制限されます。
「特定部位不担保」といわれる制限で、保険会社が指定する特定の部位が、保障の対象から外れます。
特定部位不担保には期間があり、保障対象外となっている部位は「不担保期間」中は、入院や手術の給付がされません。
例えば、通常の医療保険に妊娠中に加入する場合、子宮や卵巣、卵管などが特定部位不担保となり、切迫流産や切迫早産による入院・手術、妊娠高血圧症候群や帝王切開での分娩などが保障の対象外となります。
この不担保期間は、保険会社や商品によって異なりますが、一般的には契約から1〜2年程度設定されることが多いです。
妊娠中の場合、子宮や卵巣、卵管などが不担保部位となることが多く、切迫流産や切迫早産、妊娠高血圧症候群、帝王切開での分娩などが保障対象外となります。
保険に入れたとしても、妊娠中にかかる可能性の高い疾患がほとんど保障されなくなってしまいます。
例えば不担保期間中に次の妊娠をした場合、特定部位の不担保は継続されているため、次の妊娠でも保障が不足している状態になります。
また、特定部位不担保期間中に、子宮頸がん等の妊娠とは関係のない別の病気が見つかった場合、その保障も受けることができません。
20~39歳のがん罹患者のうち8割が女性で、中でも子宮頸がんはトップ5に入るほど罹患率が高い※ため、他人事ではありません。
妊娠中に入れる保険はありますが、保障に制限があるため、慎重に検討をする必要があります。
近年は、このような妊娠中のリスクに特化した、「妊婦向け医療保険」や「母子保険」と呼ばれる商品も増えてきています。
これらの保険は、妊娠中の特定部位不担保の制限を設けず、切迫流産や帝王切開などを保障対象としている場合があります。ただし、加入条件や保障期間(例:出産後2年程度まで)が限定されていることが多いので、ご自身の状況に合わせて検討が必要です。
※国立がん研究センターがん情報サービス 小児・AYA世代のがん罹患より
民間保険に入らなくても、健康保険があります
妊娠中にかかりやすい疾患とは、どのようなものでしょうか。妊娠中に起こる症状の例と保険適用についてまとめたのが下表です。
項目 | 健康保険 | 民間保険 |
---|---|---|
つわり(重度)※ | 適用 | 適用 (入院・手術) |
切迫流産 | ||
切迫早産 | ||
妊娠高血圧症候群 (妊娠中毒症) |
||
妊娠糖尿病 |
※症状の内容によって適用範囲が異なります
妊娠中に多く起こる疾患のほとんどに、健康保険が適用されます。医療費が高額になった場合は、高額療養費制度があるため、自己負担額は少なくて済みます。
民間保険に入るとこんなメリットが

妊娠中のリスクは、そのほとんどが健康保険の対象内。
しかし民間保険に加入しておくと、民間保険からも保障があるため、健康保険の自己負担3割分を賄えるだけでなく、出産後の育児用品の買い物や、お子さまの入院の場合のご両親の通院費用等に充てられます。
例えば、異常分娩や帝王切開で入院した場合、差額ベッド代(個室代)や食事代、先進医療費などは健康保険の対象外となるため、自己負担額が高額になるケースがあります。
また、長期入院になった場合の家族の交通費や滞在費、退院後のベビー用品の購入費用、さらには体調がすぐれない期間の家事代行費用など、公的保障では賄えない生活費を民間保険の給付金でカバーできるのが大きなメリットです。
例えば、入院1日あたり5,000円〜1万円程度の給付金があれば、こうしたイレギュラーな出費に備えることができます。
ただ、民間保険には保険料が発生するため、保険料と疾患のリスク、保険金の用途とのバランスをよく考えるようにしましょう。
保険検討のベストタイミングと注意点

保険の加入検討に関しては、妊娠前にすることをおすすめします。
その際、女性特有の疾病への保障も一緒に考えておくと良いでしょう。先述のように、20~39歳の女性のがん罹患率は男性よりも高く、結婚、妊娠、出産の時期にがんに罹患する可能性も考えて、保険選びをするのが賢明です。
ただし、妊娠前に民間保険に加入する場合も注意点があります。
妊娠前に保険に入ったのに保障がない!?
妊娠前に保険に加入している場合でも、確認しておきたいのが、責任開始日。加入した保険の契約内容の保障が開始される日です。
責任開始日より前に妊娠していた場合や、保険の契約をしてから責任開始日までに妊娠をした場合は、保障の対象になりません。
ここでいう「責任開始日」とは、保険の契約が成立し、保険会社が保障を開始する日のことを指します。通常、告知を終え、保険会社が承諾してから一定期間(例:数日〜1ヶ月)が経過した後に設定されます。
このような場合、たとえ保険料を支払っていたとしても保障されませんので、要注意です。
保険の契約をする際、妊娠に気づいていなかった場合もあると思います。その場合、故意ではない限り、告知義務違反とはなりませんが、保障の対象にはならない場合がほとんどです。
ケース別の保障開始タイミング
ケース1:保険加入(責任開始日)後に妊娠が判明した場合
この場合、告知義務違反にはならず、特定部位不担保などが適用される可能性はあるものの、保障の対象となります。
ケース2:保険加入(責任開始日)前にすでに妊娠していた場合
告知義務違反ではない場合でも、妊娠中の疾患については保障の対象外となることがほとんどです。
ケース3:保険の申込みと責任開始日の間に妊娠が判明した場合
この場合も、原則として妊娠に関する保障は対象外となります。
そのため、妊娠を希望する段階や、妊娠が判明する前に保険に加入しておくことが最も望ましいと言えます。もし、すでに妊娠が判明している場合は、加入できる保険が限られることや、保障範囲が大きく制限されることを理解し、専門家と相談しながら慎重に検討する必要があります。
妊娠に関する保険はプロにご相談ください
妊娠後のご家族の人生設計をシミュレーションして、保障プランをたてるのが、最適な保険選びのコツです。
ご自身とご家族にどのような保険が最適か、疑問点やお困りごとがありましたら、保険選びのプロであるFPにご相談ください。保険マンモスでは、あなたのお悩みに合った優秀なFPをご紹介します。