
新しい生活への期待に胸を膨ませる一方で、「お金のこと、特に保険ってどうすればいいんだろう?」「手続きとか見直しとか、何から手をつければ…?」といった、漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
独身時代は自分のために入っていた保険も、結婚を機にその役割は大きく変わります。パートナーという、守るべき大切な家族ができた今こそ、保険について夫婦で一緒に考える絶好のタイミングなのです。
この記事でわかること:手続き・見直し・選び方の3ステップ
この記事では、保険の専門家として、結婚という節目を迎えたお二人が安心して新生活をスタートできるよう、やるべきことを3つのステップに分けて、わかりやすく解説していきます。
- 【手続き編】 まず、すぐに行うべき名義変更などの手続き
- 【見直し編】 なぜ見直しが必要か、夫婦で検討したい保険の種類
- 【選び方編】 後悔しないための、保険の考え方と進め方
専門用語はなるべく使わず、具体的な進め方を中心にお伝えしますので、保険の知識に自信がないという方もご安心ください。一つひとつ確認していきましょう。
結婚したらまず確認!保険の3つの手続きリスト
保険の見直しを考える前に、まず済ませておくべき大切な「手続き」があります。これらを忘れていると、いざという時に給付金を受け取るのがスムーズにいかない可能性もあるため、早めに対応しましょう。
① 名義(姓・住所)の変更|なぜ必要?
結婚により姓や住所が変わった場合、保険契約の「契約者」「被保険者」の名義変更手続きが必要です。これは、保険会社が契約者を正確に特定するために欠かせません。
もし旧姓のままにしておくと、入院や手術で給付金を請求する際に、本人確認に時間がかかってしまい、手続きが煩雑になることがあります。
② 保険金受取人の変更|パートナーへ変更すべき理由
独身時代に加入した保険の死亡保険金受取人は、「親」になっているケースが一般的です。結婚後は、この受取人を「パートナー(配偶者)」に変更することを検討しましょう。
万が一のことがあった際、遺されたパートナーの生活を支えるという生命保険本来の目的を果たすために、この受取人変更は非常に重要です。
③ 支払口座の変更|見落としがちなポイント
保険料の引き落とし口座の名義と、保険契約者の名義が異なっていると、保険料の支払いが正常に行われない場合があります。結婚を機に口座を一本化した場合などは、引き落とし口座の変更手続きも忘れないようにしましょう。
これらの手続きは、加入している保険会社のウェブサイトやコールセンター、担当者を通じて行うことができます。必要な書類などを事前に確認しておくとスムーズです。
【会社員向け】社会保険・雇用保険の手続きも忘れずに
会社の健康保険や厚生年金、雇用保険に加入している方は、会社への届出も必要です。
- 氏名変更の届出: 姓が変わった場合に必要です。
- 被扶養者の追加: パートナーが扶養に入る場合に手続きが必要です。
現在、マイナンバーと基礎年金番号が紐づいている場合、年金事務所などへの氏名変更届や住所変更届は原則不要とされています。ただし、会社での人事管理上、別途届出が必要なケースがほとんどのため、まずは勤務先の総務・人事担当者に必要な手続きを確認しましょう。
なぜ?結婚が保険を見直すベストタイミングである3つの理由
「そもそも、なぜ結婚したら保険を見直した方がいいの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。その理由は、結婚によってライフステージが大きく変化するからです。
理由1:守るべき「家族」ができたから
独身時代の保険は、自分自身が入院した時の治療費や、働けなくなった時の生活費をカバーする「自分のためのもの」でした。しかし結婚後は、自分に万が一のことがあった場合に遺されたパートナーの生活を守るという、大きな役割が加わります。
理由2:これからの「ライフプラン」を具体的に考える機会だから
結婚は、今後の人生設計(ライフプラン)を二人で具体的に考える最初のステップです。
「将来は子どもが欲しいか」「マイホームはいつ頃?」「どんな暮らしをしていきたいか」といった将来像を共有することで、その夢を実現するために必要なお金や、万が一の際に必要となる保障額が見えてきます。
理由3:お互いへの「経済的な責任」が生まれたから
夫婦は、お互いに助け合って生活していく共同体です。どちらか一方が病気やケガで収入を失った場合、家計全体に大きな影響が及びます。こうした不測の事態に備え、お互いの生活を守るという経済的な責任を果たすためにも、保険は重要な役割を担います。
【世帯別】結婚を機に夫婦で検討したい保険の種類
それでは、具体的にどのような保険を検討すれば良いのでしょうか。ここでは代表的な保険の種類と、世帯の状況に合わせた考え方のポイントをご紹介します。
① 死亡保険|万が一のとき、家族の生活を守る
死亡保険は、被保険者が亡くなった場合に保険金が支払われる保険です。遺された家族の当面の生活費や、子どもの教育費などに充てられます。
共働き夫婦の場合の考え方
お互いに収入があるため、すぐに生活に困ることは少ないかもしれません。しかし、パートナーが亡くなったことで世帯収入が減少し、住宅ローンの返済や生活水準の維持が難しくなる可能性があります。お互いの収入が家計にどれだけ貢献しているかを考慮し、必要な保障額を考えましょう。
片働き(専業主婦・主夫)の家庭の場合の考え方
主に収入を担う方に万が一のことがあると、家計への影響は非常に大きくなります。遺された家族が当面生活に困らないよう、十分な保障を準備する必要性が高いと言えます。また、家事や育児を担う専業主婦(主夫)の方が亡くなった場合も、ベビーシッター代や家事代行サービス費など、新たにお金がかかる可能性があるため、保障を検討する価値はあります。
必要な保障額の目安は?
必要な保障額は、家族構成、収入、貯蓄額、ライフプランによって大きく異なります。以下の式を参考に、自分たちにとっての必要額を考えてみましょう。
(遺された家族の支出)-(遺された家族の収入+貯蓄など)= 必要な保障額
② 医療保険|病気やケガによる入院・手術に備える
医療保険は、病気やケガで入院したり、手術を受けたりした時に給付金が支払われる保険です。
夫婦それぞれの保障内容を確認しよう
まずは、お互いが現在加入している医療保険の保障内容を確認することから始めましょう。入院日額は十分か、先進医療などの特約はついているかなどをチェックします。公的医療保険制度(健康保険)でカバーされる範囲も理解した上で、不足分を民間の医療保険で補うという考え方が基本です。
女性は「女性向け特約」も検討の価値あり
乳がんや子宮筋腫など、女性特有の病気に手厚く備えることができる「女性疾病特約」もあります。パートナーの意向も確認しながら、必要に応じて検討してみましょう。
③ 就業不能保険|働けなくなったときの収入減少に備える
就業不能保険は、病気やケガが原因で長期間働けなくなった場合に、毎月お給料のように給付金を受け取れる保険です。死亡や入院だけでなく、「働けない状態」が続くリスクは、特に住宅ローンなど大きな固定費がある家庭にとっては大きなリスクとなります。
④ 貯蓄性のある保険|将来の教育費や老後資金を準備する
保険には、保障機能だけでなく、将来のためにお金を貯める機能を持つものもあります。
例えば、子どもの教育資金を準備するための「学資保険」や、将来の公的年金を補うための「個人年金保険」などがあります。結婚を機に、数十年後を見据えた資産形成を考え始めるのも良いでしょう。
後悔しないために。夫婦で保険を考える3つのステップ
ここまで保険の種類について見てきましたが、「自分たちに何が必要か、やっぱり難しい」と感じるかもしれません。大切なのは、二人でしっかり話し合い、納得して決めることです。そのための3つのステップをご紹介します。
ステップ1:まずは夫婦で将来について話し合ってみる
保険選びは、将来設計そのものです。少し照れくさいかもしれませんが、この機会にお互いの価値観や夢について話し合ってみましょう。
話し合いテーマの例
- これからの暮らしについて
- 働き方について
- 子どもについて
- 万が一のときのこと
ステップ2:現在の保険内容と家計を「見える化」する
お互いが加入している保険の「保険証券」を用意し、保障内容を確認します。同時に、毎月の収入と支出を書き出して、家計全体の状況を把握しましょう。これにより、保険にかけられる予算(保険料)も見えてきます。
ステップ3:迷ったら専門家に相談してみる
二人で話し合っても結論が出ない場合や、もっと客観的なアドバイスが欲しい場合は、保険の専門家に相談するのも一つの方法です。
- 保険会社の担当者: 加入中の保険についての相談が中心になります。
- 保険ショップの担当者: 複数の保険会社の商品を比較しながら検討できます。
- ファイナンシャル・プランナー(FP): 保険だけでなく、家計全体やライフプランニングの視点から総合的なアドバイスをもらえます。
それぞれの特徴を理解し、自分たちに合った相談先を選びましょう。
【番外編】結婚式当日のトラブルに備える「ブライダル保険」とは?
結婚後の生活への備えとは少し異なりますが、「結婚」というキーワードで保険を探している方の中には、結婚式そのものへの不安を感じている方もいるかもしれません。そのようなニーズに応えるのが「ブライダル保険」です。
どんな時に役立つの?補償されるケースを紹介
ブライダル保険は、結婚式のキャンセルや、当日のトラブルによって発生する損害を補償してくれる保険です。
例えば、以下のようなケースで役立つ可能性があります。
- 新郎新婦や親族の急な入院で、結婚式をキャンセルせざるを得なくなった。
- 災害(台風など)で、結婚式場や交通機関に大きな影響が出た。
- 結婚式場で借りた衣装を、誤って汚したり破損してしまったりした。
「結婚式の万が一」が心配なカップルにおすすめ
結婚式は大きな費用がかかるイベントです。万が一の事態に備えておきたい、安心して当日を迎えたい、と考えるカップルにとって、検討の価値がある保険と言えるでしょう。
結婚後の保険に関するよくある質問
Q. 結婚したら入ったほうがいい最低限の保険は?
A. どのような保障を「最低限」と考えるかは、ご夫婦の価値観やライフプランによって異なります。一般的には、急な入院や手術に備える「医療保険」と、万が一の際に遺された家族の生活を守る「死亡保険」の必要性を最初に検討する方が多いようです。
Q. 夫婦の保険料は、月々いくらくらいが目安ですか?
A. 生命保険文化センターの2021年度の調査によると、二人以上の世帯が支払っている生命保険料(個人年金保険料含む)の平均額は年間で37.1万円(月額 約3.1万円)です。ただし、これはあくまで全体の平均値です。大切なのは、ご自身の家計にとって無理のない範囲で、必要な保障を確保することです。世帯手取り収入の5%~10%程度を一つの目安として考える方法もあります。
Q. 独身時代に入っていた保険は、解約すべきですか?
A. 必ずしも解約する必要はありません。まずは現在加入している保険の保障内容をしっかり確認しましょう。その上で、結婚後のライフプランに合わせて保障が不足している部分を追加したり、逆に保障が過剰な部分を減額したり(見直し)するのが基本的な流れです。内容によっては、そのまま継続した方が良いケースもあります。
まとめ:保険は、新しい家族の未来を支える大切な準備です
結婚は、人生の新しい章の始まりです。そして保険は、その新しい生活をこれから先ずっと支えていくための、お守りのような存在です。
難しく考えすぎず、まずは「お互いを大切に想う気持ちを形にするもの」として、夫婦で話し合うことから始めてみてください。この記事が、お二人の輝かしい未来づくりへの、ささやかな一助となれば幸いです。