75歳以上の日本人の32.5%が要支援または要介護認定を受けています(内閣府「平成30年版高齢社会白書」より)。
介護を受け始めると、介護用ベッド代などの一時費用のほか、介護サービスや介護施設にかかる固定費用がかかります。
こうした介護にかかる費用負担の大きな助けとなるのが、公的介護保険制度です。
このページでは、公的介護保険を受けるときに必要な基本知識をまとめています。
介護が必要となったご家族がいらっしゃる方、今後のご家族の介護についてお考えの方は、このページをお役立てください。
要介護者には介護給付、要支援者には予防給付が給付される
介護給付・予防給付を受けると自己負担額が1~3割になる
介護給付・予防給付とは、介護(予防)サービスをうける際、自己負担費用を1~3割にできる制度です。
自治体からお金を受け取るのではなく、サービスを受けたときに割引かれた金額を支払う「現物給付」という仕組みです。
利用者の自己負担割合は、本人の所得額によって以下のように変わります。
自己負担割合の判定法
画像出典:厚生労働省資料
受給には要介護認定が必要
公的介護保険を受給するためには、対象となる方に介護や支援が必要であるという、自治体の認定が必要です。
要介護認定を受けるには、市区町村の窓口に申請しましょう。
その後、訪問での聞き取りや医師の意見書をもとに、要介護度の審査がされます(認定調査)。
要介護度は、要支援1~2、要介護1~5までの7段階です。数字が大きいほど介護度が高くなります。
要介護認定の段階
認定区分 | 状態の目安 |
---|---|
要支援1 | 基本的な日常生活はほぼ自分で行うことができるが、要介護状態にならないために何らかの支援が必要 |
要支援2 | 要支援1よりも運動機能に若干の低下が見られ、立ち上がる際などの介助が必要 |
要介護1 | 自分の身の回りのことはほとんどできるが、要支援2より運動・認知機能などが低下し、部分的な介護が必要 |
要介護2 | 要介護1より日常生活能力や理解力が低下しており、食事や排せつなどの介護が必要 |
要介護3 | 自力での立ち上がりや歩行が困難。食事や排せつなどが自分でできず、ほぼ全面的に介護が必要 |
要介護4 | 立ち上がりや歩行などがほとんどできない。要介護3よりも思考力や理解力・動作能力が低下し、日常生活全般に介護が必要 |
要介護5 | 介護なしでの生活ができず、意思の疎通も困難 |
※上記の区分はあくまで目安です。
介護給付・予防給付の対象となるもの
介護給付・予防給付の対象となるものは、以下のとおりです。
介護給付・予防給付の対象サービスの例
- 訪問介護(入浴・看護など)
- 通所介護(デイサービス)
- 訪問・通所リハビリテーション
- 福祉用具の購入・貸与(ポータブルトイレ・入浴用品など)
- 住宅改修
- 介護老人福祉施設※
- 介護老人保健施設※
- 介護療養型医療施設※
※は要介護者のみ
介護などのサービス以外にも、福祉用具代や住宅リフォーム費用も対象となります。
介護給付を受ける前に、利用・購入するものが介護保険の適用対象かどうかを必ず確認しましょう。
要介護度ごとの支給限度額がある
要介護度ごとに、1カ月あたりの支給限度額が設定されています。
支給限度額はサービス全体にかかる金額なので、自己負担分は下記の金額の1~3割です。
限度額を超えた分は全額自己負担となります。
要介護度ごとの支給限度額(月額)
要介護度 | 支給限度額 |
---|---|
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
※2021年3月現在の金額です
知らないと損!高額介護サービス費制度
介護の自己負担上限額を超えた分が戻ってくる
「高額介護サービス費」とは、介護給付・予防給付の対象となる費用負担が高額になったとき、自己負担上限額を超えた分の払い戻しを受けられる制度です。
対象者には自治体から申請書が届きます。詳細は後述の「申請から受け取りまでの流れ」をご覧ください。
自己負担上限額は世帯所得によって変わる
高額介護サービス費の自己負担上限額は、下表のとおりです。
世帯所得ごとの自己負担上限額(月額)
所得区分 | 自己負担上限額 |
---|---|
現役並み所得者がいる世帯※ | 4万4,400円 |
住民税課税世帯 | 4万4,400円 |
住民税非課税世帯で前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円超 | 2万4,600円(世帯合計) |
住民税非課税世帯で前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下 | 2万4,600円(世帯合計) 1万5,000円(個人) |
住民税非課税世帯の老齢福祉年金受給者/生活保護受給者 | 1万5,000円 |
※現役並み所得者とは:
同じ世帯に 65 歳以上で課税所得145万円以上の人がおり、同じ世帯の65歳以上の人の収入の合計が520万円以上(単身の場合は383万円以上)である人
高額介護サービス費の支給対象外のもの
介護給付・予防給付の対象となる費用であっても、高額介護サービス費の対象にはならない場合があります。
対象外となるものの例
- 福祉用具購入費
- 住宅改修費
- 施設の居住費・滞在費および食費
- 理美容代など日常生活費
- 配食サービスにかかる負担
申請から受け取りまでの流れ
高額介護サービス費を受け取るまでの流れは、以下のとおりです。
- 上限額を超えた負担になると、自治体から支給申請書が届く。
- 申請書に必要事項を記入・押印し、自治体窓口に持参または郵送する
- 申請時に指定した口座に高額介護サービス費が振り込まれる
申請期限はサービスを利用した翌月から2年以内です。
介護にかかる費用の目安
平均介護費用は月7万8,000円、平均介護期間は4年7カ月
生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によると、訪問介護サービスなどの月々にかかる費用は平均7万8,000円、介護用ベッドや住宅リフォームなどの一時費用は平均69万円。
介護期間の平均は4年7カ月(54.5カ月)でした。
介護にかかる費用は期間や要介護度などにより異なりますが、上記の平均費用・期間で試算すると、総額は494万円となります。
民間の介護保険で備えておくと安心
介護にかかる費用のすべてを公的介護保険でまかなえるとは限りません。
公的介護保険が適用されない費用に備えるなら、民間の介護保険に加入しておくと安心です。
民間の介護保険は、公的保険と違い現金で給付されるので、受けるサービスの自由度が高くなります。
民間介護保険の加入条件や給付条件は、保険会社によってさまざまです。
加入を検討の際は、保険のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみるとよいでしょう。
執筆者プロフィール
三嶋裕貴
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。出版社に勤務したのち、保険マンモス専属ライターとして入社。
お金の失敗を防ぐための保険選びや見直し方、資産運用などの記事を執筆。
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