「健康診断で血圧が高めと言われた」「親族が脳卒中で倒れて介護が大変だった」
40代・50代を迎えると、こうしたきっかけで脳卒中(脳血管疾患)への不安を感じる方が増えてきます。
しかし、いざ保険を検討しようとしても、「公的な高額療養費制度があるから、民間の保険までは不要ではないか?」と迷われる方も少なくありません。
結論から申し上げますと、脳卒中への備えにおいて最も警戒すべきは、治療費そのものではなく、「長引く入院・リハビリ期間」と、それに伴う「収入の減少」です。
脳卒中は、がんや心疾患と異なり、命を取り留めたとしても麻痺などの後遺症が残りやすく、社会復帰までに長い時間を要する傾向があります。
その間、住宅ローンや教育費、日々の生活費をどのように賄うか。ここが最大のリスクとなります。
また、脳卒中の保険は「所定の状態が60日以上継続した場合」など、支払い条件が複雑な商品が多く、加入していたのに保険金が受け取れないというトラブルも耳にします。
本記事では、公的保障ではカバーしきれないリスクの正体と、万が一の時にしっかりと生活を守れる「一時金」重視の選び方について解説します。ご自身の生活を守るための判断材料としてお役立てください。
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脳卒中の保険は不要?公的保障では賄えない「2つのリスク」
日本の公的医療保険制度は非常に充実しており、「高額療養費制度」を利用すれば、月々の医療費負担は一般的な収入の方で8万円〜10万円程度(+食事代等)に抑えられます。
しかし、脳卒中という病気の特性上、医療費以外の部分で大きな経済的負担が発生する可能性があります。
治療費だけじゃない!平均入院日数「77.4日」の現実
脳卒中(脳血管疾患)の最大の特徴は、入院期間が長いことです。他の主要な病気と比較しても、その長さは際立っています。
| 傷病名 | 平均入院日数 |
|---|---|
| 脳血管疾患(脳卒中など) | 77.4日 |
| 悪性新生物(がん) | 18.2日 |
| 心疾患(高血圧性を除く) | 24.6日 |
| 全病気の平均 | 32.3日 |
参考:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況」退院患者の平均在院日数等
入院が長引けば、当然ながら医療費の自己負担額は積み重なります。
さらに、差額ベッド代、入院中の食事代、日用品費、家族のお見舞いの交通費など、高額療養費制度の対象外となる費用は全額自己負担となります。
特に脳卒中の場合、集中治療室(ICU)から一般病棟、そして回復期リハビリテーション病棟へと転棟するケースが多く、環境の変化やリハビリの都合で差額ベッド代が発生するケースも想定しておく必要があります。
最大の落とし穴は「収入減」と「リハビリ費用」
もう一つの、そしてより深刻なリスクが「収入の減少」です。
平均で2ヶ月半以上、症状によっては半年近く入院やリハビリが必要となる場合、会社員の方であれば傷病手当金(給与の約3分の2)が支給されますが、これまでの手取り額よりは確実に減少します。
自営業の方には傷病手当金がないため、働けない期間の収入はゼロになる可能性があります。
- リハビリ期間中の生活費の補填
- 住宅ローンの返済
- 自宅のバリアフリー改修費用(手すりの設置や段差解消など)
- 介護が必要になった場合の費用
これらは「医療保険(入院・手術給付金)」だけではカバーしきれないケースが多く、まとまった現金を手元に確保しておくことの重要性が高まります。
「脳卒中で保険は受け取れない」と言われる理由!知っておくべき「60日ルール」
「脳卒中になったのに、保険金が出なかった」という話を聞いたことはありませんか?
これは、保険商品によって「支払い条件(所定の状態)」が大きく異なるために起こる誤解や確認不足が原因であることが多いです。
古いタイプの保険に多い「60日間の労働制限」という壁
従来の保険や、一部の特約などでは、以下のような条件が設定されていることがあります。
- 脳卒中を発症し、その疾病により60日以上、言語障害・運動失調・麻痺などの神経学的後遺症が継続したと医師によって診断された場合
この条件の場合、例えば「軽い脳梗塞で入院したが、治療がうまくいき、30日で退院して職場復帰した」というケースでは、保険金支払いの対象外となることがあります。
「脳卒中になった=すぐにお金がもらえる」わけではない点に注意が必要です。
今は「治療即給付」が主流に!支払い条件の変化
近年発売されている保険商品では、こうした「受け取りにくさ」を解消するため、支払い条件が緩和されているものが増えています。
- 脳卒中と診断され、手術を受けた場合
- 脳卒中と診断され、治療を目的とした入院を開始した場合
このように「診断+入院・手術」という早い段階で給付金を受け取れるタイプであれば、当面の治療費や生活費に素早く充てることができます。
ご自身が加入している、あるいは検討している保険が「60日要件があるタイプ」か「即時給付タイプ」かを確認することは非常に重要です。
【失敗しない選び方】脳卒中対策は「一時金」の金額と回数で決まる
では、具体的にどのような保障内容を選べば、脳卒中のリスクに合理的に備えられるのでしょうか。ポイントは「まとまったお金」と「範囲」です。
入院日額より「まとまった一時金」を重視すべき理由
入院1日につき5,000円や1万円が給付される「入院給付金」も大切ですが、脳卒中対策としては「診断一時金(特定疾病一時金)」を厚くすることを検討してみてください。
入院日額タイプは「入院した日数分」しか受け取れませんが、一時金タイプであれば、診断等の条件を満たせば100万円、200万円といったまとまった現金が一括で振り込まれます。
- 使い道が自由(生活費、ローンの支払い、リハビリ費用、介護費用など)
- 退院後の通院治療中も、手元の資金で安心して生活できる
金額設定の目安としては、会社員の方であれば年収の半分程度、自営業の方であれば年収の1年分程度を確保できると、治療に専念しやすくなると考えられます。
「1回限り」か「無制限」か?再発リスクへの備え
脳卒中は再発のリスクが極めて高い病気です。
発症後、将来にわたってリスクに備えるためには、継続的な予防と経済的な備えが重要になります。
一度給付金を受け取って保障が終了するタイプもありますが、再発のたびに何度でも(あるいは回数制限ありで)受け取れるタイプを選ぶことで、将来的なリスクにも備えることができます。
ただし、複数回受け取るためには「前回の支払いから1年以上経過していること」などの条件が付くことが一般的です。
範囲はどこまで?「脳卒中」と「脳血管疾患」の違い
保険のパンフレットを見ると、「脳卒中」と書かれているものと「脳血管疾患」と書かれているものがあります。これは保障される病気の範囲が異なります。
- 脳卒中:くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞の3つに限定されることが多い
- 脳血管疾患:上記に加え、脳動脈瘤やもやもや病など、より広い範囲の脳の病気が含まれる
カバー範囲が広い「脳血管疾患」を対象とした保険の方が、より安心感は高まります。
年代・状況別のおすすめ活用法【40代・50代・既往歴】
年齢や健康状態によって、選ぶべき保険の優先順位は変わります。
40代・50代は「就業不能保険」との組み合わせを検討
40代・50代は、教育費や住宅ローンの負担がピークを迎える時期であり、かつご自身の健康リスクも高まる世代です。
医療保険の特約で一時金を確保することに加え、長期間働けなくなった場合に毎月お給料のように給付金が受け取れる「就業不能保険」を組み合わせることで、経済的な破綻リスクを大幅に軽減できる可能性があります。
県民共済だけで大丈夫?民間保険との併用テクニック
都道府県民共済などは、手頃な掛金で幅広い保障が得られる素晴らしい制度ですが、脳卒中に特化した一時金の額などは、民間の保険に比べると控えめな場合があります。
ベースとして共済を活用しつつ、脳卒中やがんなど「長期化・高額化しやすい病気」に関しては、民間の医療保険や一時金特約で上乗せをして備えるというのも、費用対効果を考えた賢い選択肢の一つです。
高血圧・薬服用中でも検討できる「引受基準緩和型」
「高血圧の薬を飲んでいるから、もう保険には入れない」と諦めている方もいらっしゃるかもしれません。
現在は、持病や既往歴がある方でも申し込みが可能な「引受基準緩和型(限定告知型)」という保険の種類が増えています。
- 過去3ヶ月以内に入院・手術・検査をすすめられていないか
- 過去2年以内に入院・手術をしていないか
- 過去5年以内にがん(悪性新生物)で入院・手術をしていないか
一般的に、上記のような3つ程度の質問(告知事項)に「いいえ」と答えられれば、加入できる可能性があります。
通常の保険より保険料は割増されていることが一般的ですが、どうしても保障が必要な方にとっては有力な選択肢となります。
よくある質問(FAQ)
脳卒中の一時金を受け取った場合、税金はかかりますか?
原則として非課税です。身体の傷害に起因して支払われる保険金(入院給付金や手術給付金、特定疾病一時金など)は、金額にかかわらず所得税・住民税の課税対象にはなりません。確定申告も不要です。
※例外として、死亡保険金等は課税対象となる場合があります
参照:国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」
(身体の傷害に起因する給付は非課税である旨の解釈に基づく)
脳梗塞と診断されましたが、今から入れる保険はありますか?
一般的な医療保険への加入は難しくなる傾向があります。しかし、発症から一定期間(例:1年〜2年など)が経過し、再発や入院がないなどの条件を満たせば、「引受基準緩和型保険」などに申し込める可能性があります。ただし、加入後一定期間は保障が削減される場合などもあるため、詳細な確認が必要です。
60日ルールなどの「支払い条件」はどこを見ればわかりますか?
保険商品のパンフレットの「支払い事由」欄や、約款、または契約概要・注意喚起情報の「保険金をお支払いできない場合」などの項目に記載されています。非常に細かい字で書かれていることが多いため、不明な点は加入前に担当者に確認することをお勧めします。
脳卒中のリハビリ費用は保険で全額出ますか?
医療保険の「入院給付金」は入院中のリハビリであれば日数分支払われますが、退院後の通院リハビリについては、「通院給付金」特約などをつけていない限り支払われないことが一般的です。また、介護保険を利用したリハビリ等の自己負担分は、民間の医療保険の対象外となることが多いです。だからこそ、使い道自由な「一時金」での備えが役立ちます。
掛け捨て型と積み立て型、どちらが良いですか?
脳卒中を含む医療保障を重視するのであれば、「掛け捨て型」の方が保険料を安く抑えられ、その分保障内容(一時金の額など)を手厚くしやすい傾向にあります。貯蓄機能を兼ね備えた「積み立て型」は、途中で解約した場合にお金が戻ってくるメリットがありますが、月々の保険料は高くなる傾向にあります。予算と目的(保障か貯蓄か)に合わせて選ぶことが大切です。
まとめ:脳卒中保険は条件が複雑!後悔しないためにプロの比較を
脳卒中は、命に関わるだけでなく、その後の生活(リハビリや就労)に大きな影響を与える病気です。
だからこそ、保険で備える際には「入院日額いくらか」だけでなく、以下の点をしっかり確認する必要があります。
- 支払い条件:診断ですぐ出るか、60日の制限があるか
- 一時金の額:働けない期間の生活費をカバーできる金額か
- 対象範囲:脳梗塞なども広くカバーされるか
しかし、数多くの保険会社から、自分の健康状態や予算に合い、かつ支払い条件が良い商品を見つけ出すのは容易ではありません。
特に既往歴がある場合などは、加入可否の判断も複雑になります。
「自分にとって一番条件が良い保険はどれか」「今の保険で本当に守れるのか」と少しでも疑問に思われた方は、一度専門家の視点を取り入れてみることをお勧めします。
保険のプロであれば、各社の細かい約款の違いを把握した上で、あなたに最適なプランを設計することができます。
将来の安心のために、まずは現状の確認から始めてみてはいかがでしょうか。
参考
- ・厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況」退院患者の平均在院日数等
- ・国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」
- ・国税庁「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」





