過払い金返還請求のからくりと3つのデメリットとは?仕組みと注意点を学ぼう

過去の借金返済時に、払い過ぎた利息分がある場合、それを取り返すための手続きが「過払い金返還請求」です。

「過払い金が発生しているかも!請求しないと損!」という言葉を目にした経験がある方も多いのではないでしょうか?

しかし実際には、過払い金返還請求にもリスクはあります。過払い金や返還請求に関する基礎知識と共に、デメリットについても分かりやすく解説します。

メリット・デメリットの両方を理解した上で、今後について決断しましょう。

誰にも言えず苦しんでいませんか?

そもそも過払い金とは?なぜ発生したの?

過払い金とは、過去の法律の矛盾によって、貸金業者に対して支払い過ぎていた利息分のことを言います。

過払い金とは、その名前のとおり「支払い過ぎているお金」のこと。つまり、そもそも支払わなくても良かったお金であり、自分のお金です。

だからこそ、返還請求という正規の手続きを踏むことで、貸金業者から返してもらえる可能性があります。もちろんこれは、法律に則った手続きです。

では、そもそも過払い金が発生したのはなぜなのでしょうか?

利息制限法と出資法という2つの法律が関係!グレーゾーン金利って?

これら2つの法律は、どちらもお金の貸借に関するルールを定めたもの。お金を貸す際の上限金利も定めていましたが、それぞれが異なる上限を設定していたのです。

法律 上限金利
利息制限法 10万円未満       20%
10万円以上100万円未満 18%
100万円以上       15%
出資法 29.2%

上限金利が高い出資法をもとに貸付を行えば、より高い「29.2%」という金利を適用できます。貸金業者にとっては、より効率良く稼げる仕組みと言えるでしょう。

実際に多くの貸金業者は、出資法で定められた29.2%を上限として、過去に貸付を行っていたのです。

20%以上29.2%以下の金利は、利息制限法の上限を超えているにもかかわらず、出資法によって適法と判断されていました。この間の金利のことを、「グレーゾーン金利」と言います。

利息制限法の上限を超えた貸し付けや、法律の矛盾点は、大きな社会問題となりました。

2006年には、最高裁が「グレーゾーン金利による貸し付けで払い過ぎた利息分は、返還請求が可能である」という趣旨の判決を下します。

これにより、過去にグレーゾーン金利で貸付を受けた人が、貸金業者を相手に返還請求を行うケースが一般的になりました。グレーゾーン金利によって払いすぎていた利息を取り戻すことができる仕組み(からくり)が過払い金返還請求です。決して怪しい詐欺まがいのものではありません。

ちなみに、2010年には出資法は改正され、上限金利は利息制限法と同じに設定されています。

つまり、現在の貸付において過払い金が発生することはありません。過払い金は過去の借金返済時に生じるお金であり、返還請求をするためには、過去にさかのぼって状況を把握する必要があるのです。

また、過払い金が発生している可能性があるのは、消費者金融やクレジットカード会社など貸金業者からお金を借りていた場合に限られます。銀行カードローンは昔から法律の範囲内でだったので、過払い金が発生していることはありません。

メリットだけではない!過払い金返還請求のデメリットは大きく3つ

過払い金返還請求の最大のメリットは、「お金が返ってくる」ことです。

  • 支払い過ぎていたお金を受け取れる
  • 過払い金で、現在返済中の借金を完済できる可能性がある

過払い金がいくら発生しているのかは、過去の借金返済状況によって変わってきます。中には、100万円以上が返ってくるようなケースもあるでしょう。

そのメリットは、一目瞭然。しかし実際には、過払い金返還請求をすることによる、デメリットも存在しています。

メリットばかりに目を向けていると、「こんなはずじゃなかった…!」という事態に陥る可能性も。3つのデメリットを紹介するので、事前に知っておいてください。

1.過払い金で完済できなければブラックリストに登録

過払い金返還請求をすると、ブラックリストに登録される恐れがあります。

ブラックリストとは?
信用情報機関が保有する顧客情報に、事故情報(ネガティブ情報)が載った状態のこと。一定期間以上返済が遅れた場合や、破産した場合に、事故情報が登録される。

ブラックリストに登録されれば、クレジットカードの発行や利用ができなくなります。また新たにローンを組むことも、難しくなるでしょう。

しかし、過払い金請求をしてもブラックリストに登録されないケースもあります。ブラックリストに登録されるかどうかは、現在の借金の返済状況や残債によって変わります。3つのケースに分けて、その影響を解説します。

【すでに完済している借金の過払い金の返還請求をする場合】
すでに返済し終わった借金で過払い金が発生している場合、返還請求をしても、ブラックリストに登録されることはありません。もちろん、クレジットカードの発行や新規ローンの審査で、困ることもないでしょう。
【現在も借金返済中だが、過払い金が返還されればそれで完済できる場合】
現在も借金を返済中でも、過払い金によって清算できる場合も、基本的にブラックリストには登録されません。

ただしこちらの場合、請求先の業者によっては、「返還請求の手続き中=任意整理の手続き中」として、一時的にブラックリストに登録されるケースがあります。

手続きが完了し、完済が確認できた時点で事故情報が消去されます。

【現在も借金返済中で、過払い金を返還されてもまだ残債がある場合】
過払い金が返ってきても、まだ返済が続く場合、請求の事実が事故情報として登録されます。返還請求=任意整理と捉えられるためです。

こちらの場合、手続きが完了しても事故情報は消去されません。そのまま、ブラックリストに登録され続ける可能性が高いでしょう。

ブラックリストに登録されるリスクがあるのは、「返済中」の借金を過払い金請求した場合です。とはいえ、ブラック入りしたからといって、ずっと不自由な思いをするわけではありません。

任意整理として事故情報が登録されても、一般的に約5年が経過すれば、削除されます。その後はクレジットカードの発行やローン審査で、苦労することはなくなります。

2.貸金業者の「社内ブラック」への登録

一般的なブラックリストとは、信用情報機関が所有する顧客情報によるものです。このほかに、貸金業者が自社の顧客を対象にした、社内情報を持っている可能性があります。

社内情報とは、どの顧客が過去にどのような行動を取っているのか、詳しい履歴が残っていくもの。過払い金返還請求をすれば、その社内情報にネガティブ情報が記載されます。

社内情報が使われるのは、あくまでも「社内で行われる取引」に関してのみ。信用情報機関のように、影響が大きいわけではありません。

社内ブラックになると、過払い金請求をした貸金業者では、今後借り入れするのが難しくなります。

社内ブラックになる期間は会社によって異なり、永久的にブラックになることも。何年も経ってから借入を申し込んでも審査に落ちてしまうこともあります。

とはいえ、

  • 社内情報にどこまでの情報を記載するのか?
  • 過払い金返還請求に対して、どういった認識を持っているのか?
  • 新たな契約時に、過去の情報をどの程度参考にするのか?

こうしたポイントは、業者によって実態が異なるもの。「絶対に借りられない」というわけではなく、「借りられない恐れがある」という点を、頭に入れておきましょう。

たとえ社内ブラックに引っかかって、お金を借りれないとしても大丈夫です。世の中には、非常に多くの貸金業者がありますから、利用先で困ることはないでしょう。

3.収入超過による生活保護の受給停止

こちらは、現在生活保護を受けている方に関係するデメリットです。

手続き後、返還された過払い金は、「収入」として計算されます。過払い金返還によって、生活保護の受給要件以上の収入を得た場合、受給はストップします。

生活保護の受給条件とは?
最低生活費として認められた13万円/月よりも、世帯収入が少ないこと。年収換算で、収入156万円以下であれば受給できる。

100万円以上の過払い金が返ってくるような場合、受給条件を満たさなくなる可能性は高いでしょう。超過分を返還、もしくは受給停止となります。

生活保護の受給中に過払い金を受け取った場合、担当の福祉事務所に申告してください。申告しないまま隠していると、不正受給と判断されます。

もちろん、過払い金によってまとまったお金を得たとしても、その収入は継続するわけではありません。また収入がない状態になれば、生活保護の再申請は可能なので、安心してください。

クレジットカードの過払い金を請求する際のデメリット

クレジットカードの「キャッシング枠」も過払い金請求の対象です。

ショッピング枠のリボ払いも過払い金が発生してそうに思いますが、ショッピング枠は利息制限法の適用外です。ショッピング枠のリボ払いは割賦販売法によって規制されているため過払い金が発生することはありません。

キャッシング枠では「利息」を支払っていることになりますが、ショッピング枠はお金を立替えた「手数料」を支払っているという扱いになります。

注意すべき点は、ショッピング枠にまだ支払いが残っていた場合、キャッシング枠の過払い金はショッピング枠の支払いに充てられることです。

キャッシング枠とショッピング枠の利用残高を照らし合わせた上で過払い金を請求しなければ、損をしてしまう可能性があります。

過払い金請求には条件がある…できない人は?

ここまで紹介してきたとおり、過払い金返還請求にはデメリットもあります。とはいえ、その影響はごく限定的なものと言えるでしょう。

つまり、過去に過払い金が発生している人のほとんどは、「返還請求をした方が良い」ということ。デメリットを心配し過ぎる必要はありません。

ただし中には、「過払い金の返還請求ができない人」もいます。以下の条件を確認してみてください。

借金の契約日が2010年6月17日以降の方は、そもそも過払い金が発生していません。この場合も、過払い金返還請求をすることはできません。

過払い金請求の時効を迎えている

過払い金には、時効があります。過去の取引で過払い金が生じていても、時効が完成している場合、返還請求できなくなります。

過払い金の消滅時効は、「最後の取引から10年後」です。最後の取引とは、「契約」ではなく「完済」を指します。

つまり、契約の日付から10年以上が経過していても、完済日から10年以内であれば請求できる可能性があるということ。また契約と完済を繰り返している場合も、「連続した1つの取引」として認められれば、取り戻せる可能性があります。

本当に過払い金の時効を迎えているのかどうかは、素人では判断が難しいケースもあります。無料相談などで、専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。

借入先の貸金業者がすでに倒産している

過払い金返還請求が認められてから、すでに長い時間が経過しています。その間に、倒産した貸金業者も決して少なくありません。

過去の取引で過払い金が発生していても、取引先業者がすでになくなっている場合、残念ながら返還請求はできません。まずは一度、確認してみてください。

利用した業者名がなくなっていても、他社との合併や吸収によって事業が続いている場合は、合併・吸収先業者への返還請求を検討しましょう。

こちらについても、弁護士や司法書士に相談すればOKです。請求できるのかどうか、請求する場合の相手先はどこになるのか、アドバイスをもらえます。

過払い金はどうやって返還請求する?具体的な手順とポイント

過払い金の返還請求の流れは、以下のとおりです。

  1. 過去の取引履歴を取り寄せる
  2. 引き直し計算をして過払い金の有無を調べる
  3. 貸金業者に対して過払い金返還請求書を送付する
  4. 貸金業者と交渉する
  5. 過払い金が入金される

過払い金請求の第一歩は、現状把握です。

  • 本当に過払い金が発生しているのか?
  • 発生している場合、総額でいくらあるのか?

これらの情報を確定するために必要なのが、過去の取引履歴と引き直し計算です。計算結果をもとに、業者に対して請求書を発行します。

貸金業者と請求内容を確認し、合意した上で過払い金が入金される仕組みです。

過払い金返還手続きは複雑!専門家への依頼がおすすめ

言葉にすると非常にシンプルな過払い金返還請求手続き。しかしその実態は非常に複雑です。プロである弁護士や司法書士に依頼すると良いでしょう。

弁護士に依頼した場合、取引履歴の取り寄せから交渉まで、すべてを一括でお任せできます。交渉がまとまらず、訴訟になった場合もそのまま対応を一任できます。

弁護士と司法書士の一番の違いは、1社あたり140万円以上の過払い金を扱えるかどうかです。司法書士が扱えるのは、1社あたり140万円以下の場合に限られます。また、「認定司法書士」資格を有している必要もあります。

プロに依頼した場合、返還された過払い金の中から、弁護士・司法書士報酬を支払わなくてはいけません。とはいえ、そのお金を差し引いても、依頼するメリットの方が大きいと言えます。

過払い金の金額が高額になりそうな場合は、最初から弁護士事務所に相談すると、二度手間を防げます。相談先選びの参考にしてみてください。

自分で手続きするメリットと、無視できないデメリット

過払い金返還請求を自分で行っても、専門家に依頼する場合と基本的に流れは同じです。しかし、自力手続きにはメリットもありますが、無視できないデメリットも多くあるのでおすすめはできません。

自力手続きのメリットは「節約」

自力で返還請求をする最大のメリットは、費用の節約です。

弁護士に依頼した場合の報酬額の目安は、返還された金額の約20%。自力で頑張れば、このお金も自分の手元に残ります。

過払い金請求を弁護士に依頼したときにかかる費用の相場は、1社あたり最低でも10万円。取り戻せる過払い金が多いほど報酬を多く支払う必要があり、着手金や別途手数料がかかる場合もあります。

一方、自分で行えば報酬などを払う必要がないので、1社あたり2万円程度に抑えることができます。

「せっかく手続きするなら、できるだけ多くのお金を手元に残したい!」と思う方にとって、非常に魅力のあるメリットと言えるでしょう。

デメリットは数多くの「リスク」

とはいえ、自力手続きのメリットだけに注目するのは危険です。なぜなら、自力手続きの裏には数多くのリスクが潜んでいるからです。

  • 計算間違いにより、返還額が減少するリスク
  • 請求が却下されるリスク
  • 業者との交渉がまとまらないリスク
  • 訴訟になった場合に、対応できないリスク

引き直し計算は非常に複雑で、素人には難しいもの。計算結果が間違っていた場合、返還額が減少する可能性もあるでしょう。

それだけで済めば良いのですが、最悪の場合、返還請求そのものが退けられてしまう恐れもあるのです。

法律知識がない人が交渉の場に立ったとき、専門家が交渉する場合と比較して、相手から下に見られてしまう可能性も。交渉を有利に進めることが難しくなります。

時間も手間もかかるのが、自力手続きの最大のデメリットです。また、交渉力によって、返還される金額に差が出るのが過払い金の現実。実際に発生している過払い金よりも低額の金額を提示して和解しようとしてくる可能性が高いです。

たとえ費用を節約できても、返還金額が少なくなってしまえば意味がありません。

弁護士は、過払い金を確実に回収するための手段を知っていますし、交渉力にも長けています。失敗するリスクを背負いながら自力手続きするよりも、プロに任せた方が安心だといえるでしょう。

過払い金請求を成功させ、時間や手間を省くためにも弁護士への依頼がおすすめです。

専門家は「どこも同じ」じゃない!おすすめ事務所5選

過払い金返還請求は、どの弁護士事務所・司法書士事務所に依頼しても同じではありません。過払い金返還請求に強い、おすすめの事務所を5つ紹介します。

弁護士法人・響
幅広い法律問題を扱う弁護士法人で、過払い金返還請求には「債務整理サポートチーム」が対応します。日本全国どこからでも、24時間・365日体制で相談を受付けています。法律相談料は0円です。
天音総合法律事務所
顧客満足度を重視した法律事務所で、一人一人に寄り添った対応を心掛けています。フリーダイヤルにて、24時間365日、全国エリアからの相談を受付中。完済過払いについては、着手金0円で対応しています。
ベリーベスト法律事務所
2022年3月現在、全国58拠点を持つベリーベスト法律事務所。地方でも相談しやすい点が魅力です。過払い金請求手続きについても、家族にバレないよう、最大限の配慮をしてもらえます。
みつ葉グループ
司法書士法人みつ葉グループは、借金問題を幅広くサポートしています。借金問題に関する相談料は無料。完済過払いであれば基本報酬も無料のため、「調査の結果過払い金が発生していなかった」という場合、無料で対応してもらえます。
サンク総合法律事務所
24時間・365日体制で、全国からの相談を受け付けています。過払い金については、「迅速な回収」をモットーにしているサンク総合法律事務所。女性弁護士もいるアットホームな雰囲気の中で、リラックスして相談できます。相談料は無料です。

弁護士事務所・司法書士事務所には、それぞれ独自の特徴があります。相性の良い事務所や、自身のニーズに応えてくれる事務所を、ぜひ探してみてください。

過払い金チェッカーを利用してみるのもおすすめ!

インターネット上のサービス「過払い金チェッカー」を使ってみるのもおすすめです。

過払い金チェッカーは、「過払い金シミュレーター」とも呼ばれ、簡単な情報を入力するだけで過払い金が発生している可能性があるかがわかるもの。

診断結果はあくまで概算なので過信は禁物ですが、24時間いつでも無料で利用できる便利なツールです。

債務整理に力を入れている法律事務所の多くは、借金減額診断や過払い金チェッカーを提供しています。「無料で利用できるなんて怪しい」と疑ってしまいますが、相談や依頼を増やすための広告のようなものであり、怪しいことはありません。

法律事務所が運営しているものは安全なので、目安を知るためにぜひ利用してみてください。

過払い金請求は時効がある!デメリットを知り速やかに行動しよう

過払い金請求には、メリットだけでなくデメリットもあります。

特に影響が大きいのは、やはりブラックリストへの登録でしょう。とはいえ、自身の借金の状況によって、受ける影響が変わってくるのも事実です。

  • 自分の借金では、どのようなデメリットが生じるか分からない
  • 過払い金請求をしたことで、どういった具体的な影響が出るか知りたい
  • リスクが不安で、行動に踏み出せない

このような場合は、まずは一度、借金問題に強い弁護士・司法書士に相談してみましょう。過払い金のデメリットについて、相談者の状況をもとにアドバイスしてもらえます。

過払い金には時効があり、いつまでも請求できるわけではありません。返ってくるはずのお金を取りこぼさないためにも、シミュレーターで発生しているかの目安を確認してから、弁護士事務所や司法書士事務所の無料相談を活用しましょう。

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